導入後まで考える給食会社の選び方
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給食における食中毒事情と衛生管理

日本の食中毒の発生状況(2017年~2019年)

食中毒は食品を扱う上で必ずついてまわるリスクです。どれくらいの規模で私たちの生活に影響を及ぼしているのか、参考までに厚生労働省が発表している2019年度(平成30年)の食中毒統計調査の資料を見てみましょう。

事件数 患者数 死亡者数
2017年 1,139件 20,252人 14人
2018年 1,014件 16,464人 3人
2019年 1,330件 17,282人 3人

参考:厚生労働省|平成30年食中毒発生状況(概要版)及び主な食中毒事案(書籍・研究論文名称)【PDF】

日本の食中毒事件数は2017年から2018年にかけて一度減少したものの、2019年に再び増加してます。また、食中毒による死亡者が2017年から2019年の3年間だけで20人もいる点にも驚きです。食中毒が起きている施設を確認してみましょう。

施設別・食中毒による患者数の内訳(2019年度)

割合 患者数
飲食店 50.4% 約8,710人
仕出屋 16.0% 約2,765人
事業場 11.7% 約2,022人
旅館 7.5% 約1,296人
学校 6.4% 約1,106人
製造所 2.0% 約347人
病院 0.6% 約104人
家庭 0.6% 約104人
その他(不明) 4.3% 約743人

参考:厚生労働省|平成30年食中毒発生状況(概要版)及び主な食中毒事案(書籍・研究論文名称)【PDF】

各施設の患者数は、2019年度の食中毒患者数(17,282人)を100%として算出しています。また、小数点以下は四捨五入しているため、あくまでも目安として参考いただけますと幸いです。

食中毒の被害が大きいのは飲食業施設

食中毒被害の半数以上を占めているのは飲食店。ここには居酒屋・レストラン・ファストフードなど、ジャンルや規模を問わず様々な飲食店が含まれているため、店舗の多さも関係しているかもしれません。2番目に食中毒の被害が多かったのは仕出屋(注文を受けてから調理した料理や弁当を配達する業種)でした。

飲食をメイン事業としている施設は、そのぶん食中毒が起こるリスクも必然的に高くなるため、衛生管理を徹底しましょう。

集団感染の可能性が高い施設こそ要注意

注目したいのは、食事の提供がメイン事業ではないにもかかわらず、患者数1,000人以上だった施設。事業場(支社や店舗、工場など)、旅館、学校などです。

しかも、学校給食や社食、食事つき旅館などは「注文を受けてからつくる」のではなく、まとめて調理してから提供するケースがほとんど。これらの施設は飲食店や仕出屋と違い、1回の調理につき提供する人数が多いため、1度の食中毒事件で集団感染・大量被害となる可能性が高いのです。そういう意味でも、衛生管理を今一度見直す必要があります。

過去学校給食の食中毒発生状況や被害事例をまとめているので、詳しくみていきましょう。

給食の食中毒事例

【case1】2018年3月岡山県真庭市小学校給食におけるノロ集団食中毒

岡山県真庭市の小学校の給食でノロウイルスによる集団感染が確認されています。3月2日に出された給食を食べて、子ども・職員の多くに嘔吐や下痢の症状が確認されたそうです。

保健所の検査結果、ノロウィルスと判明してから学校給食をストップ。最初に症状が出たのは、40代の女性だったそうなので、教員の方かもしれません。

食中毒の発生原因

3月2日の献立は、グリーンサラダ・ハヤシライス・ひなあられ・牛乳の4種類。食中毒の原因はノロウイルスですが、その侵入経路や発生の原因の調査内容は、残念ながら確認できませんでした。

食中毒に感染したのは、児童・教師あわせて41人。幸い死者がでることはありませんでした。

行政の処置

行政は3日間の業務停止処分処置を言い渡します。3月2日は金曜日だったため、週明けの3月5日月曜日は臨時休校となりました。また、事件発覚から1週間はお弁当持参の対応となったそうです。

その後の対応

組織内での情報共有・給食施設の衛生管理を厳しくチェックし、配膳の仕方や食べ方の指導など、細かく改善されました。現在は学校給食の提供が再開されているようです。

真庭市小学校給食の食中毒事件における見解

真庭市で食中毒が発生したのは3月の上旬。暦上では春かもしれませんが、まだまだ寒さが厳しく空気の乾燥が激しい時期です。ノロウイルスに限らずさまざまな菌が空気中・食品に増殖している可能性があります。

ノロウイルスは体内で増殖するウイルス。そのため、たとえ食品に付着しているウイルスの量が少なくても、食中毒が起こる可能性が高いのです。ノロウイルスはある一定の温度まで加熱調理をすると死滅します。調理時は食材の中心まで熱を通すようにしましょう。

また、食品の衛生管理だけでなく、給食の調理に携わる人たちの感染予防対策も欠かせません。

【case2】2018年5月埼玉・東京・茨城・福島の老人福祉施設の給食における食中毒事例

給食は学校だけではなく、産業施設(企業や老人福祉施設)でも提供されています。ご紹介するのは、老人福祉施設の給食で発生した食中毒の事例です。

2018年5月25日以降、東京都など首都圏近郊エリアの老人福祉施設で次々と食中毒が発生。合計20名が感染したそうです。

食中毒の原因菌について

食中毒の原因菌(遺伝子型腸管出血性大腸菌O157)が検出されたのは、老人福祉施設で出された夕食メニューにて、鶏肉のみそ焼きに使われていたサンチュ。

このサンチュは埼玉県の高齢者施設だけでなく、東京都・茨城の高齢者施設にも納品されていたため、食中毒の感染範囲の拡大が推測されました。ところが、サンチュを生産していた業者で検査をしたところ、原因菌(遺伝子型腸管出血性大腸菌O157)は検出されなかったのです。

原因菌はどこで付着したのか

検査結果から、サンチュが市場に流通した過程で、原因菌(遺伝子型腸管出血性大腸菌O157)に感染した可能性があると考えられます。サンチュそのものが原因と言い切れないところもありますが、最初に食中毒患者が発生した埼玉県の高齢者施設の検査では、開封済みのサンチュから遺伝子型腸管出血性大腸菌O157が検出されています

その後の対応

事件後は、生食で食べる食品はよく洗うように指導が入ったそうです。

老人福祉施設の食中毒事件における見解

食中毒は嘔吐・下痢が主な症状で、体内から外に出れば回復する感染症と甘く見ている人もいるでしょう。しかし、食中毒は一歩間違えれば命を落としてしまう危険な感染症です。高齢者施設は抵抗力の弱い高齢者が多いぶん、とくに命の危険が及ぶ可能性が高いと考えましょう。

HACCPシステムに準拠した衛生管理が必要

1996年(平成8年)に学校給食施設で大規模な食中毒事件が起こりました。この経験を踏まえ厚生労働省がHACCPシステムを導入。現在はHACCPが学校給食を運営する上での基準となっています。

HACCPシステムとは

HACCP(Hazard Analysis Critical Control Point)は元々、アメリカ航空宇宙局NASAで採用されていた、食品の取り扱いに関する危害を事前に予防するためのシステムです。原材料を受け入れる段階から最終的に食事ができあがるまで、衛生面に問題がないか細かくチェックをします。HACCPは感染リスクだけでなく、異物混入や危険物質が発生しないか?など、さまざまな視点から食の安全性を確保できるシステムなのです。

HACCPシステムのポイント

HACCPシステムでは、食品や物を製造する上で安全性を確認する手順が12の項目でまとめられています。手順に沿ってチェックを進めることで、衛生面・安全性の管理が行き届くでしょう。

HACCPの手順

上記は1~5の手順です。HACCPチームを社内に設けることで、HACCPに精通した人材を確立できるほか、社内における衛生基準を明確化できます。

また、給食のメニューに使う食品を選定して、特徴や状態をデータ化することで、普段使用している食材が納入された段階のチェック基準になります。

選定した食材をどのように使うのか、取り扱い時の注意点をデータ化しておくのも重要な手順の1つ。データ化すると調理器具・機器の使用方法を明確化できるため、食中毒対策はもちろん、給食づくりにおける安全面の確保にもつながります。

こちらは6~12の手順です(※通称HAPPCの7原則)。HACCPの12の手順の中でもとくに重要なポイントと考えられています。

手順6について。HACCPにおける危害の定義は主に3つあります。生物学的危害(ウイルス・病原体・寄生虫など)・化学的危害(洗剤・殺菌剤・農薬・食品添加物など)物理学的危害(ガラス片・プラスチック片・金属片など)です。

この内容から、HACCPは食中毒だけにフォーカスしているのではなく、「健康を脅かす問題を可能性があるものすべて」にフォーカスしていることがわかります。衛生管理をする上で、具体的に何に気をつけなけらばならないのか明確にしているのです。

また、最後の手順は「記録」となっています。検証した結果をのちに見返すことは、今まで見えなかった問題点を明確化するきっかけになるからです。

HACCPシステムのメリットとデメリット

メリット

HACCPの手順と原則を踏まえて作成されたマニュアルは、検証結果に基づいて作られます。そのため、万が一のトラブルが起きても迅速かつ冷静に対処できるメリットが。食品衛生管理はもちろん、調理作業における事故・ミスの減少につながります。トラブルやミスが減ることによって、作業効率・生産性もアップするでしょう。また、HACCPの導入は、衛生管理の意識やこだわりのアピールにもつながります。

デメリット

HACCPは衛生管理や品質向上において、とても有益かつ画期的なシステムです。しかし導入した以上、継続的に続けていかなければなりません。導入したHACCPが効率的に作用されているのか?システムは崩れていないか?うまく運用できているのか?など、定期的な確認が必要なのです。手順を改めて見直したり、改善が必要な部分には機材を導入したりと費用もかかります。

また、HACCPはすぐに導入できるわけではありません。時間もかかります。給食の献立を開発したときは、その都度細かいルールの制定が必要です。

HACCPシステムに準拠している委託給食会社5選

LEOC

LEOCは全国2,000箇所に給食サービスを提供している会社です。子どもから高齢者まで、幅広い年代の方が満足して食べられるメニューを考案。ホテルやレストラン活躍していたシェフたちが、HACCPシステムに準拠しながら美味しい給食を提供しています。

衛生面においては、鮮度の劣化・最近の繁殖を抑えるために、0〜3度に急速冷凍するクックチルシステムを採用している点に注目。真空調理法による新メニューも積極的に開発しています。調理時間と温度管理はもちろん、適時適温配膳にもこだわっている委託給食会社です。

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アイコーメディカル

病院向けの給食サービスを中心として、幼稚園・福祉施設にも食事を提供している会社。品質マネジメントシステム認証(ISO9001)を受けている工場で調理をしています。抵抗力の弱い子どもや高齢者が安心して利用できるよう、国際基準の安全性を目指しているそうです。

各施設にアイコーメディカルから調理師が向かい、美味しくて温かい食事を提供してくれる仕組み。行事・イベントの際は特別メニューを考案して、食育にも力をいれています。

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シダックスコントラクトフードサービス株式会社

カラオケで有名なシダックス株式会社のグループ企業で、給食事業を展開しています。給食サービスを提供する上で、調理に携わるスタッフの健康管理にもこだわっているのが特徴。正社員だけでなく、パート・アルバイトにいたるまで、全スタッフの健康診断結果・勤怠状況を管理しています。体調が悪いスタッフは出勤停止にするなど、感染を広げない制度を導入。食品衛生管理はもちろん、感染防止策に入れて安全性を高めている給食会社です。

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名阪食品

名阪食品は、HACCP(衛生管理システム)に加え、独自の食中毒・事故防止対策を導入しています。衛生管理室では、毎月1回の頻度で衛生に関する教育・指導を開催。独自の社内検査も導入しています。

食品の品質を維持する衛生管理体制に力を入れているのはもちろん、調理をするスタッフが菌をもちこまないように年に18〜24回の細菌検査も実施しているそうです。

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テスティパル

テスティパルはクックチルセンターで調理した料理を0〜3度に冷却。サテライトキッチンへ運び、食材の中を75度以上でもう1度加熱する「クックチルシルテム」を採用しています。食品の安全性はもちろん、給食の品質や栄養バランスを保った状態で提供できる仕組みです。

また、献立のジャンルを増やしている点も魅力的。福祉施設においては、ソフト食の個別対応もしてくれる給食会社です。

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学校給食における食中毒防止策

学校給食は大量の食事をまとめて調理・提供するのが一般的です。万がいち食中毒が起きると、集団感染するリスクが高いため非常に危険。そのため、学校給食では食中毒を防止するために、さまざまな対策を打ち出しています。代表的な対策をご紹介しましょう。

給食室をドライ方式にする

細菌にとって適切な「温度・湿度・栄養分」が揃うとすさまじい速度で繁殖します。細菌の繁殖を防ぐよう、学校給食では「ドライ方式」の導入を奨励。

ドライ方式では、調理場の作業台・床などを常に乾燥した状態に保ち、そこにアルコールを吹きかけて、殺菌したタオルできれいに拭きます。これにより、細菌繁殖につながる「湿度と栄養分が多い環境」を断ち切るのです。

ドライ方式にすると湿度が低い環境で作業できるため、スタッフにとっても快適で作業しやすい環境を与えられるメリットがあります。

ドライ方式の注意点

食器や調理器具を洗うときに、床に水をこぼしてウェットな状態を作らないよう、細心の注意を払いましょう。また、水分に気をつかいすぎて作業効率が下がる可能性もあります。

加熱の温度と時間の制定

食中毒の原因菌として代表的な「ノロウイルス」は、熱に弱い性質があります。そのため、ノロウイルスによる食中毒を防ぐには、ある一定の時間・温度で調理しなければなりません。学校給食衛生管理基準では、食材の中心部が75度で1分間以上の加熱を必要とされています。また、ノロウイルス感染しやすい食材(例:二枚貝など)は、市食材の中心部が85度で1分間以上の加熱が必要です。

手洗いをしたあとは洗浄効果を確認

作業前に手を洗うのは当然ですが、学校の給食づくりに携わるスタッフはその洗浄効果を科学的根拠に基づいて検査する必要があります。

手洗い効果のチェック方法は、手形培地・ATP法よる拭き取り検査・手洗いチェッカーなど。手形培地・ATP法による拭き取り検査は、科学的根拠に基づいて数十秒で判定結果が出るチェック方法です。

手洗いチェッカーは、紫外線ランプに手をかざし、洗い残し部分がないか一目でチェックできる画期的な方法です。いずれの確認方法も短時間でできるため、多くの現場で導入されています。

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